高速炉のカバーガスシステム
高速中性子炉(高速炉)の中でも、原子炉の炉心を冷却するための冷却材に液体金属等を用いるものはLMFRと呼ばれています。液体金属は水と比較しても沸点が非常に高く、また熱を輸送する能力も高いのが特徴です。水の場合、1気圧では100℃で沸騰してしまうため、軽水炉などの発電用原子炉で用いる場合には熱効率を上げるために加圧することで沸点を上げて利用しています。それに対して液体金属冷却の場合は加圧する必要がなく、1気圧(常圧)での運転が可能となっています。
ナトリウム冷却材の場合、空気との接触を避けるため、原子炉容器や炉外燃料貯蔵槽などの内部のナトリウム液面をアルゴンガスなどの不活化ガスで液面を覆っています。ガスの圧力は一定になるように制御されており、また循環しているカバーガスに放射性の希ガスなどが混じっても除去できるよう活性炭吸着塔が設けられています。またナトリウムの液面を覆うため、カバーガスにナトリウムの蒸気が混じることがあります。これがカバーガスを循環させている配管に凝着して流れを妨げてしまう可能性があるため、ベーパトラップと呼ばれるナトリウム蒸気が入らないようにする装置が取り付けられています。ちなみに、窒素ガスを用いた場合、中性子の吸収によって放射性の窒素14ができてしまうため、原子炉のカバーガスとして利用されることはありません。
カバーガス系の系統は配管の周囲よりも高い圧力になるように設計されています。これは万が一、配管が損傷するなどしても外部のガスがカバーガスの系統に流れ込まないようにするためです。