核物質の保障措置で用いられた監視カメラ「COSMOS」
核物質の保障措置というのは、核物質が「平和目的に使用され、紛失や盗難が起きないように管理された状態にあり、不正に軍事転用されていないか」を確認するためのものです。そのためには原子力施設内の配管や機器類が、届け出されたものから不正に改造されたりしないように「封印」を行ったりするほか、監視カメラによる監視を連続して行ったりしています。
「COSMOS」とは90年代半ばに、日本原子力研究所(現JAEA)がソニーと共同開発した「コンパクト・サーベイランス・システム」と呼ばれる監視カメラです。それまでは8mmフィルムを用いた「Twin-Minolta」と呼ばれる監視カメラが利用されていましたが、現像と確認に手間と時間がかかってしまうという難点がありました。COSMOSは8ミリのビデオテープを利用したレコーダーを内蔵しており、バッテリー駆動でランダムな撮影間隔で3ヶ月で3万枚の写真を記録することができます。ビデオカメラでも使用されるテープを使用しているのが特徴です。カメラは商用電源を使用するAタイプと、リチウム電池を使用するBタイプの2種類が開発されました。カメラと記録装置が一緒になったモジュールと共にそのコントロールモジュールやメモリモジュール、電源モジュールがセットになって構成されています。
監視カメラそのものがこっそり改造されてしまったり、内部のテープなどに細工されてしまうと意味がありません。そのため装置一式はタンパーケースと呼ばれる金属製の箱に収められた状態で運用されます。
現在はデジタルカメラを利用することで、撮影した画像はデータとして保存できるほか、外部記憶装置や遠隔監視用のネットワークを経由して監視できるようにした次世代型監視システム「NGSS:Next Generation SurveillanceSystem」等が採用されています。