「純粋水爆」とは何か
核融合反応とは要するに「外部からのエネルギーで原子核を無理やりくっつける」事です。そして無理やりくっつけた事で放出される大きなエネルギーを利用しようというものです。無理やり原子核をくっつけるだけなら小さな装置でも可能であり、そこまで難しくありません。しかし「投入した以上のエネルギーを得る」ためには、核融合のエネルギーで次の核融合を起こせる「自己点火条件」を達成する必要があり、そのためには強力なエネルギー源が必要です。
核兵器においては、核分裂の連鎖反応で生じるエネルギー、つまり原子爆弾の炸裂を利用しています。もしもこの核融合反応を起こすための装置(ドライバー)として原子爆弾を利用せずに、大規模な核融合反応を起こそうというものが「純粋水爆」です。もし純粋水爆が可能であれば自然界に存在する重水素やリチウムを利用して強力な大量破壊兵器を生み出せることになってしまいます。
しかし現状では原子爆弾に匹敵する最適なドライバーが存在しないため、純粋水爆は開発されていません。核融合を利用した兵器が実用化されているとは言っても、現状では核兵器を世界に拡散させない「核不拡散」を担保しているのは、ウランやプルトニウムを用いた核兵器用核分裂性物質の技術的な製造の困難さと、IAEAが行う国際的な保障措置協定に基づく核査察であると言えます。