核融合エネルギーの利用
核融合発電
核融合発電においては、核融合で生じるエネルギーを電力へと変換します。それには核融合エネルギーを電力に変換するシステムが必要となりますが、これは核融合反応で生じた熱エネルギーを輸送し、蒸気発生器において水を沸騰させ、その蒸気によってタービンと発電機を駆動させる方法が考えられています。発電用として核融合エネルギーを実用化する場合に重要になるのが発電の効率と経済性です。核融合反応を引き起こすには、最初にある程度のエネルギーを必要とします。その最初の投入エネルギーをできるだけ小さく抑えつつ、核融合によって得られるエネルギーをどれだけ大きく取れるか、が重要なポイントになります。
放射性廃棄物の低減
D-T核融合反応で生じる高速中性子はエネルギーが非常に高いため、ウランやプルトニウムの核分裂を用いる原子炉では核分裂させることのできないマイナーアクチノイド(MA)と呼ばれる超ウラン元素を核分裂させる事ができます。超ウラン元素とはウランより重い元素の事を指し、特にマイナーアクチノイドはネプツニウム(Np)、アメリシウム(Am)、キュリウム(Cm)などの元素を指します。
マイナーアクチノイドはウランやプルトニウムに中性子が衝突した際、核分裂を引き起こさずそのまま中性子を吸収してしまう事で生み出されます。このマイナーアクチノイドは強い放射能を持ち、また崩壊熱による発熱を伴います。さらに軽水炉などに代表される熱中性子炉では核分裂させることができず、核燃料で生成されたマイナーアクチノイドは残存することになります。そのため使用済み核燃料から分離されたマイナーアクチノイドは高レベル放射性廃棄物(HLW)として扱われます。
核融合炉においては、その高速中性子を利用することでこのマイナーアクチノイドを核分裂させ、その量を大きく減らせます。
核分裂ハイブリッド炉
核融合反応で生じる中性子を用いて、トリウム以上の核分裂性物質(Fissile Material)や核分裂可能物質を核分裂させる事でエネルギーを得るタイプの原子炉です。核分裂に用いる中性子は核融合で生じた中性子を用いるため、未臨界の状態でエネルギーを得ることができます。これは核融合炉を停止させた時点で核分裂反応も同時に停止できるため、安全性におけるメリットもあります。