核分裂ってなに?

核分裂という言葉は原子力発電や核兵器に関する話題で聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。核分裂とは文字通り原子核が分裂する現象の事です。

原子核を構成している陽子と中性子は核力という素粒子による強力な力によってお互いが結合しています。しかしこの核力は強いのですが、影響を与えられる範囲がとても狭いという特徴があります。

そして一方で、原子核自身が持つプラスの電荷と、原子核の周囲に存在する電子のマイナスの電荷による電磁気力が、核力よりも広い範囲に影響を与えています。

同じ電荷は反発しあう性質があるため、マイナスの電子同士や、プラスの原子核同士はお互いを退け合う関係にあります。原子同士は外側の電子同士でも反発しあう上に、原子核同士も反発しあう性質があるということです。

手で机を引っぱたこうとしましょう。そうすると手は机の下へすり抜けたりすることなく、机にぶつかります。これは電子同士が電磁気力で反発することで「ぶつかる」という現象が起きるわけです。物凄く当たり前の事ですが、原子が持つ電荷がこの世界を形作っている、形作れている理由の一つなのです。

つまり原子は電磁気力という強力な盾を持っているため、中々その原子核へと干渉することができないのです。

しかし電荷の無い粒子はどうでしょうか?中性子がそうです。中性子は電荷を持たない為、原子が持つ電磁気力の壁を難なく突破し、原子核へ干渉することができるのです。原子核へ中性子が到達した場合に「核反応」が起きるのです。

どういった確率でどんな核反応が起きるかは、衝突された原子核や、衝突する中性子の運動エネルギーによって大きく変わりますが、核反応は主に3つに分けられます。

一つは「散乱」、これは中性子が原子核に弾き出される現象です。もう一つが「捕獲」、これは中性子が原子核に吸収されて別の同位体へと変化させる現象です。これによって原子核はさらに不安定になり、ベータ崩壊やアルファ崩壊を経て別の元素へと変化することが多くあります。

そしてもう一つが「核分裂」です。中性子を吸収した原子核は不安定になり、そのまま2つ以上の軽い元素に分解してしまいます。この時に放出されるエネルギーは原子核がその核力を振りきって壊れてしまう程のものであるため、アルファ崩壊やベータ崩壊とは比べ物にならない程の強力なエネルギーが放出されます。

ウラン235の中性子による核分裂

ウラン235が中性子によって 核分裂する様子

核分裂はどんな原子でも起きるものではなく、トリウム以上に重い元素で起きうる現象になります。

核分裂の時には原子核の破片である核分裂生成物と、中性子が2~3個放出されます。この放出された中性子がまた別の核分裂を引き起こす物質に吸収され、核分裂を引き起こし…というドミノ倒しのような連鎖反応が起きると次々と原子核が分裂し、強力なエネルギーを得続ける事ができるわけです。

このドミノ倒しのような連鎖反応を臨界と呼びます。核分裂によって生じる中性子の数を一定に維持する事で連続した核分裂連鎖反応を実現するわけです。

また放射性崩壊の一種として、自発核分裂と呼ばれる自然に一定の確率で勝手に核分裂するという元素も存在します。カリホルニウム252等の元素がそういった性質を持ちます。核分裂で生じる中性子は電磁気力の影響を受けないため、物質を透過する性質が強く、これを利用した「中性子ラジオグラフィ」という非破壊検査などに利用されています。また、原子炉を最初に起動する際に、核分裂連鎖反応というドミノを倒すキッカケとなる火種として利用されてもいます。

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